古民家と漆喰

漆喰は「劣化」しない?

モノは必ず傷み、モノには必ず流行があります。「流行り廃り」の言葉の通り、人々の関心はその都度変化し忘れられていくものです。そのことを単に「劣化」と呼ぶことも出来るでしょう。
ところが、我が国の建築文化において1000年を越えて使われてきた漆喰。それはまさしく流行に左右されない価値を有しているものあるといえないでしょうか?

長い年月を経た漆喰壁を見ると、傷やひび割れ、汚れや手垢がはっきりとわかります。
しかしながら、その姿に「味」を感じることが出来るならば、朽ちた土壁に感動を覚えるのと同様、愛すべきもの。

その状態を決して「劣化」とは呼ばないはずです。

漆喰は新たな価値を生む

「我が家に漆喰を塗ってほしい」と望む方は、漆喰が住まいに新たな価値を生むことを求めています。
漆喰に求めるものは 健康 ・ 安心 ・ 安全 ・ 高級感 ・ 重厚感 …
しかし近年ではメーカー各社の努力により、それらは現代の新しい建材でも実現できるものとなっているのです。

ただし、現代の建築材料に多用される金属や樹脂は「出来たて」の状態が最も高い性能を有しています。そして、鉄は錆び、樹脂は脆くなるなど、そこから劣化していくモノばかり。
逆に漆喰は、炭酸ガスを吸収しながら長い時間をかけて硬化していくために、新たに塗られたばかりの状態では本来の性能を持ち合わせない、まさに生まれたての状態なのです。

まさに時間と共に成長し強く変化していく素材であるといえるでしょう。

そして、それこそが漆喰によって与えられた「価値」と呼ぶことは出来ないでしょうか?

住まいに新たなブーム

昨今の「健康に良い住宅」ブーム。部材を全てF☆☆☆☆に限定し、ホルムアルデヒド0(ゼロ)を看板に。 現在は、そこから更に、左官材や無垢の木などを積極的に取り入れた「自然素材の住宅」が主流になっていますね。

  「全て天然です」
  「選びぬいています」
  「こだわっています」 が謳い文句。

ハウスメーカーよりも、信用できる地元の工務店を…と地産地消にこだわる。
そのこだわりはエスカレートして
 木の管理、森の管理に至り、アレルギーテストや、VOC計測は当たり前…。

そんな住まいの業界に、ここ数年、新築、改修を問わず住まいづくりにさらに新たな流れが見られるんです。 

    正しい素材の家

    その1つ目が「正しい素材の家」。
    住まいに素材を厳選した事例 「喜悠の家」

    木造住宅のスタンダードとなってしまったといえる無垢の木と漆喰。
    集成材は無垢の木とは呼びません。
    同じく、高温で強制乾燥された木材も、それらの耐久年数などの研究が行われるたびに、結局昔ながらの「狂いの生じる」自然乾燥の木材が珍重されている現状があります。
    木は製材され使われ始めてからも乾燥が進み、最も強くなるには100年程度かかるといわれます。
    改修が行われ塗り替えられる壁材には当然、同様に強度を増していく漆喰が相性良く使われることに不思議はないと思いませんか?

    新しい「古民家」

    そして2つ目が「古民家」。和風、欧風を問わず、今、古民家がブームです。
    新築やリフォームの際に、新しい柱や梁の木材に塗装を施して、古びた姿を再現されることが多いですね。壁には様々な塗り壁材が使われています。

    しかし、それはあくまでも「古民家」を再現したにすぎないですよね?
    さらに言えば、それらの建物が50年、100年後に古民家と呼ばれるようになるとは到底思えません。時間を経るごとに劣化していく住まいなのですから。
    が、最近では本物の古材や漆喰などを効果的に使用して、より本物を追求する事例も増えてきました。
    古材と新しい材木を効果的に使った事例 「喜悠の家」

    結局選ばれるのは「正しい素材」。
    だからこそ古民家は現代に残っているのだと考えるべきでしょう。

漆喰は時間を中和する

日本漆喰協会により毎年募集、表彰が行われている「日本漆喰協会作品賞」という賞があり、その受賞作品が日本漆喰協会のホームページで公開されています。
全ての作品はその過去数年以内に施工されたものであるにもかかわらず、どの作品を見てもそこに流れている時間に新旧の感覚を覚えることが出来ないでしょう。
受賞作品の選考評にも書かれていますが、漆喰には「時間を忘れさせる力」が秘められていると考えることができないでしょうか?

例えば100年ものの古材を利用したリノベーション。長い年月を経た木と塗られたばかりの漆喰の間に何ら違和感を覚えることは無いでしょう。
さらに新たに使われた木材と古材。そこに漆喰が介在することで、時間の違和感を中和することも可能となるでしょう。

漆喰は時間と共生する価値を与えるものでもあるのです。

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